| 人事・労務管理にあたっての留意点 |
次に記載する留意点は、北見式賃金研究所の北見昌朗先生より助言されたことです。私たち社会保険労務士が人事コンサルティングを進めていくうえで、労働法との整合性は避けて通れません。私は次の点に留意しつつ、人事・賃金コンサルティングや人事・労務管理のアドバイスを実施しています。
労働基準法
日本には労働基準法という法律がある。この法律は全産業に適用されているが、ライン作業のような製造業を前提に立法されているため、製造業以外の業種には馴染まない面もある。
しかし、法律である以上守らざるを得ない。労働基準法は「労働時間に対応して賃金を支払う」ことを基本にしている。
能力主義とか成果主義といったものは労働基準法では想定していない。
使用者の裁量権
使用者の裁量が大幅に認められているのは「賃上げ」「賞与」「配転」の3つである。それ以外は一方的にやると法に触れることが多い。
「賃上げ」は、昇給をいくらにしようとも、それが不当な差別でない限り使用者の勝手である。しかし、「賃下げ」となると相手の同意がない限り違法となる。賃金の時効は2年なので、遡って支払命令を受ける可能性がある。
「賞与」は、使用者の評価により自由に差をつけることができる。
「配転」も使用者の判断で行うことができる。しかし、業務上の必要性がなければならないので、「毎日草むしり」というような配転命令は通らない。
成果主義のやり方
今の時代のキーワードは成果主義である。しかし、成果主義はやり方を誤るとトラブルのモトになる。
まずは賃金と賞与の違いを知ることが必要である。
賃金は、法で保護されているため、使用者が一方的に減額することは許されない。つまり、上げることはできても下げることは難しい。また、労働時間に基づいて支給する義務がある。
一方、賞与は、業績および従業員の勤務成績に基づいて支給することが認められている。
よって、短期的な成果主義は賞与で行うべきことであり、賃金で行うことは無理がある。
また、賃金に不満・不安を持つ者に対して、成果を求めても困難である。従業員のライフステージを考慮する必要もある。
賃金のあり方
@ 時間外手当や家族手当等を含めた賃金が生活できる水準になるまでは定期的に引き上げる。特に、新卒
者の初任給は地域の相場があり、若い従業員の賃金は少々無理をしてもコンスタントに昇給させないと
先輩・後輩の社内バランスが保てなくなる。
A 賃金が生活できる水準までに達したら、それ以上は従業員本人の努力により勝ち取ってもらう。
そこで、役職手当と技能手当という2つの手当を重視する。役職手当は「リーダーシップ」に対応する
もので、技能手当は「専門的技能・知識」に対応するものである。
賞与のあり方
@ 会社の利益と従業員の利益を一致させる。会社の業績に連動して賞与が決まる仕組みにする。
A 人件費の効率(人件費分配率=総額人件費÷粗利益)が向上したら賞与が増え、効率が悪化したら賞与
が減る仕組みにする。
B 何を評価されたのか具体的に本人にわかるようにする。
賃金体系の一例
<賃金>
・基本給(能力給と年齢給)〜能力給は等級ごとに上限を設ける。年齢給は一定年齢から下げることもできる。
・役職手当
・技能手当(高い専門的技能・知識があり、退職されては困る人)
・家族手当(子女手当)〜残業手当の対象外
・業務手当・営業手当(定額残業制の導入)
・時間外手当・休日勤務手当・深夜勤務手当
・特別手当
<賞与>
・夏・冬の賞与
会社業績分(賞与原資を「基本給+役職手当+技能手当+業務手当」で按分)
個人評価分(赤字でも対象者には支給する)
・決算賞与
<退職金>
・円満にわかれるための「手切れ金」的な位置付けで、多くない金額を準備する。
※残業計算
時間外手当=月例賃金÷月平均所定労働時間×1・25×時間外労働
月平均所定労働時間=(365日−年間所定休日)×1日あたりの所定労働時間÷12ヶ月
よって、所定休日が多いほど、また1日あたりの所定労働時間が短いほど、時間あたりの単価は高くなるので、むやみに所定労働時間の短縮は行わず、有給休暇の消化を進める。
所定労働時間を法定(1週40時間)になるように設定すると、年間労働時間は2085時間、月平均労働時間は173時間となる。
